NHK Eテレで2月13日(月)に『スイッチインタビュー「小倉智昭氏 × アルボムッレ・スマナサーラ」EP2』。前回のまとめ記事の続きです。
お二人の話題は、小倉さんの病気から臨死大変へと移ります。
臨死体験について
[放送から引用]
膀胱がんになって、死というものに初めて向き合ったんですよ。よく死の直前に『お花畑があって死んだ親父がこっちに来いというが、自分はいかなかった。そしたら死ななかった』と。あれは頭の中に妄想しているだけですよね?
そうです。
僕は死んだらまったく無くなると思うですよ。まあ元素とかになって、それが輪廻転生という考え方になるのかとも思うけど、まったくゼロになるのが死だと思ってるんですけど、この考えっておかしいんですか?
臨死体験は “near-death experience”と英語でいいますけど、みんなこの考えに執着しているんです。
よく見ると、あれは文化的なイマジネーションなんです。西洋人の“near-death experience”と日本人の“near-death experience”は違うんです。日本人が『花畑を通って、川を通ってなんとかなんとか…』になる。川の向こうから『おいでおいで』というだけでね。西洋は『さぁーっと上がって上がって、なんかトンネルがあって、トンネルの向こうから光があって、(でも)そこに行かないでそこに止まった』ってね。あるいは『天使たちが来て、「あんた、戻りなさい」と言った』とかね。あれはdaily experience、毎日心にインプットした、洗脳した、文化的なイメージですよ。
そういう洗脳された人が亡くなる直前には、脳がそういう風に覚えていて、そういうことを見たりするんですかね?
するだろうと思います。生き返った人々がそう言ってるんだからね。
でも私は、それはそんなに真剣に考える必要はないと思いますよ。
私が子供の頃は『三途の川を渡りかけて、途中で引き返した』なんていう話が一般的でしたが、今の若い人達は、空から天使が降りてくるイメージが見えるかも知れません。文化的な刷り込みも、当たり前ではなく、その時々で変化していきますね。
謙虚で役に立てばよい
(看取る人に対して)「あなたはもうすぐ死にますよ」なんて、なかなか言えないですよね?
言います。「準備できてる?」と。
いい言葉ですね。「あなたはもう終わるときの準備はできてますか?」って。
そこは言わなくても。
「あんた、準備できてる? 人生いま何を考えてる?」
「なんの準備ですか?」って言う人もいるでしょうね。
この衣だから、だいたい分かりますよ。
ときどき私の顔だけ見たいという人もいるんです。だから、その時はそばに行って、私の手を握ってるし、握らせてあげて、いろいろ普通のことをしゃべって帰るんです。
私が帰ったらだいたいまぁそれで亡くなるんです。
最期に長老にお会いしたいっていうことは、長老がいかにその人のために説法をしたのか、大切なことをおっしゃったから…
知識的なことよりも、これは我々の「こころのつなぎ」なんです。ですから、内容・知識はそれほど大事かどうか分からないんだけど、話を聞いたら、お互いにこころでつないでいるんですね。私はその人のことを知っている、その人は私のことを知っているし。だから『顔を見たい』というのはそういうことなんです。『難しい仏教の話を聞きたい』ではないんです。小倉さんはどう考えますかね? いままでの人生を振り返ったら…
いままでは「よくやったな」と思います、自分で。
ただ、これからの目標っていうのが何も考えてないんで。
のんびりとあるがままの姿で余生が送れればよいな、とは思ってますね。
我々は今はもう、計画は立てる必要はないし、ただ明るくて、その日その日過ごせばいいし。今日みたいに「ちょっと仕事をお願いします」って言われると、身体がちょっと苦しくても、みんなのために小倉さんも頑張ってるしね。まあそんなものでしょう、人生はね。
これから目標を持たずに余生をのんびり生きようと思ってましたけど、ちょっと考え方を変えます。
あ、そう!そこなんです、ポイントは。だからそこを最後の文章にしましょうか。
「人々はやっぱり生きている間は人類の役に立つべきや」と。
助けられてみんな生きてきたんだから、これからも助けられて生きてみましょう、という文章でピリオドいかがですかね? そんなにデッカイ墓石でもないんだからね。
分かりました。これからはちょっと、人のためになることとか、世のためなんていう大きなことは言えませんけど、お役に立つことをやって、恩返しして…
そうですね。謙虚で、なにか役に立てばいいや、っていうね。
そうやって死んでいきましょう!
うん、死ぬまでそうやってがんばりましょう、ってことでね。
がんばりましょう。長老もがんばってください。
番組の最後、小倉さんが『そうやって死んでいきましょう』と語ったところで、スマナサーラ長老がさりげなく「死ぬまでがんばりましょう」と言い換えたところが印象的でした。死んでいく肉体(物質)に焦点を当てるのではなく、「人は生きている間にどのような行為をすべきか」という点を重視していることが分かります。それはお二人の対談というだけでなく、番組を見た我々に出されたスマナサーラ長老からの宿題のように感じました。
小倉智昭さんとスマナサーラ長老のスイッチインタビューまとめは以上です。
放送の翌日、ゴーターミー精舎で「振り返り対談」を行いましたので、よろしければそちらもご覧ください。